秘密の地図を描こう
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「……アウルだけずるい」
アークエンジェルに戻れば、ステラにこう言われてしまった。
「お前が『ネオのそばがいい』って言ったからだろうが」
だから、自分だけが付いていったのだ。アウルがそう言い返す。
「……でも、一緒に行きたかった……ネオも一緒に行けばよかったのに」
そうすれば、みんなでお出かけできたのに……とステラは残念そうな表情で口にした。
「お土産を買ってきましたわ。一緒にお茶にしましょう」
それで機嫌を直してください、とラクスが微笑む。
「お茶?」
そうすれば、彼女は嬉しそうな表情を作る。
「えぇ。お客様と一緒に、ですわ」
彼女の言葉に背後に隠れていたミーアが姿を見せた。その瞬間、ステラが目を丸くする。
「ラクスが二人?」
何で、と彼女は呟く。
「二人とも。ステラがかわいそうだろう?」
ともかく、彼女がこれ以上混乱しないように……とキラは口を挟むことにした。
「ラクスと一緒にいるのはミーアさんで……ネオさんとラウさんみたいな関係だ、と思えばいいかな?」
彼女にわかりやすい言葉で説明をする。
「……ネオとラウと一緒……わかった」
そっくりだけど別の人なのね、と彼女はうなずく。
「ミーア、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくね。えっと、ステラちゃん」
かわいい、とミーアが言えば、ステラははにかんだような笑みを浮かべる。これならば大丈夫だろう、とキラは判断をした。
「アウルはゆりかごに入らなくていい?」
疲れているなら、早めに休んだ方がいいだろう。そう判断をして問いかける。
「疲れてねーけど……キラがそういうなら、入る。何かあったとき、困るし」
動けないと、と彼は続けた。
「大丈夫だよ。ラウさんもバルトフェルド隊長もニコルもここにはいるでしょう?」
キラはそう言って微笑み返す。
「それに……まだしばらくはここにいる予定だから」
大丈夫だよ、と続ける。
何か気になることができたらしいカナードが、今は別行動をとっているのだ。彼が戻ってくるまではここで待機をすることになっている。
いくらブルーコスモスでも、ここで仕掛けてくることはないだろう。そんなことをすれば、完全に民衆の支持を失う。彼らにしても、それはわかっているはずだ。
それに、情報を集めるにしても、ここの方がいい。そう判断してのことだ。アウルもそれは聞いていたはず。
「わかった。でも、速攻で戻ってくるからな」
それなのに、彼はこう言ってくる。
「無理をしてはだめだよ?」
そう言った瞬間、周囲から小さな笑い声が上がった。
「……何?」
理由は想像できるが、せめて彼らの前では何もなかったことにしてくれてもいいだろう。キラはそう思う。
「ここにシンやレイがいたら大変だな、と思っただけです」
ニコルがしれっとした表情でそう言ってくる。
「アスランでも大変そうですわ」
ラクスはラクスで、こう付け加えた。
「否定できません」
ミーアもうなずいてみせる。
「そういうことにしておくね」
ため息とともにキラはそう言った。